コピーライター、新人賞、鉄道

おねがい。
耳たぶを刺さないで。

それに、まぶたも、くちびるも、えりあしも、
ひとさし指となか指の間も、胸の先っぽも、
おへそも、お尻も、ふとももも、かかとも、
おねがいだから刺さないで。
特にかゆいの。ここ刺されると。

  虫よけ スキンガード

このコピー、私が初めてコピー年鑑に載ったコピーです。

うれしかった。でも、くやしかった。
真逆の気持ちが入りまじったコピーです。

なぜか。

この年、私は、新人賞をとれませんでした。

けっこう、期待していましたが、
ノミネートにも入りませんでした。

なのに、一般部門に応募したのです。

おねがい。
耳たぶを刺さないで。

このコピーが掲載されました。

もし、このコピーを新人賞に応募していたら…
つい、そう思ってしまったのです。そのときは。

今は、もちろん、
そんなことはわからん、と思えますが。
新人賞が欲しかった人間としては、
ついついそんなことを考えてしまったのです。

それから3年後。
私は新人賞に引っかかりました。
まさに引っかかったという感じです。

うれしかった。

しかし、そのとき思ったのは、
3年前に、あのコピーを応募して、
新人賞をもらえていたら、
僕はどうなっていたんだろう、
ということなんですね。

なんて後ろ向きなんでしょう。

こどものころから、後ろ向き、
そういう考えをしがちなこどもでした。

クラスにいる前向きな子が苦手でした。

今でも、基本的には、そうです。

長く大人をやってきているので、
前向きな人間になることはできます。
2時間ぐらいは。

それ以上になると、
後ろ向きな自分が出てきます。

長い打合せが苦手なのは、
そういう自分が出てくるからです。

仕事的には、
あまりよろしくないと思われます。

私をすこしだけ知っている多くの人は、
私のことを、よくしゃべり、よく笑い、
明るい人間だと思っているかも知れません。

1回しか会っていない人は。

私は、鉄道マニア、いわゆる鉄です。
しかも、乗り鉄です。

明るいわけがありません。

タモリさんと同じです。
あの方も、クライ。
根は、クライ。

明るい人間が
タモリ倶楽部のような番組を、
何十年も続けられるわけがありません。

地層が好きなわけがありません。

私もタモリさんと同じく

鉄道が好きです。

時刻表が好きです。

地図が好きです。

散歩が好きです。

高低差が好きです。

すべて、ひとりで楽しむ世界です。

そんな人間が、
明るいわけがありません。

だから、コピーライターをやってます。

この流れで打ち明けますと

私の夢は、
タモリ倶楽部に出ることなんです。

鉄道の回に出たいんです。

くるりの岸田くん、ダーリンハニーの吉川くん、
ホリプロ南田マネージャー、そして私とタモリさん。
仕切りは、ガダルカナルタカさん。

いいなぁ。

世間からは、
コピーライターは
社交的と思われるがちですが、
そんなこたーありません。

ひとりで、ウジウジ考えるのが好きな人種です。
まちがいありません。

夜中に、コピーを書いていて、
いいコピーが書けたら、きっと、
ふふふとひとりで笑っているはずです。

ブキミです。

翌日、そのコピーを見て、
こんどは、
ひとりで、落ち込んでいるはずです。

クライです。

そのくりかえしを、
毎日、何十年も続けている人間が、
前向きな人間のはずがありません。
明るいわけがありません。

でも、
それで、いいんだと思います。

そういう人間が必要とされている職業なんです。
コピーライターという職業は。

明るい人間ばかりの社会なんて、
気持ちわるいじゃないですか。

だからコピーライターという仕事、

好きなんですよね。

 

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花岡邦彦